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丸つけをすると、筆算のバツがいつも同じくらい並んでいる。『うちの子は筆算が苦手なのかな』と、心配になっている方もいるはずです。
結論から言うと、筆算が苦手な子の多くは、苦手なのは筆算全体ではなく、決まった1か所で止まっています。
この記事では、答案からその1か所を見つける診断表と、計算ミスを減らすコツ、早く解けるようになる練習の順番を紹介します。
筆算が苦手な子は「止まる場所」がだいたい決まっている
筆算のまちがいは、九九・位ずれ・繰り上がりと繰り下がり・書き写し・手順忘れの5つに分けられます。原因が分かれば、練習するのはその1か所だけで大丈夫です。全部をやり直す必要はありません。
『何回もプリントをやっているのに、まちがいが減らない』という声はよく聞きます。
実は、まちがいの原因が分からないまま問題の数を増やしても、同じ所で同じようにつまずき続けることが多いんです。
| 原因 | どんな計算で出やすいか | 答案に出るサイン |
|---|---|---|
| 九九 | 掛け算・割り算 | 1つの位だけ答えがずれている |
| 位ずれ | 2けた×2けた・割り算の商 | 答えの桁数が多すぎる・少なすぎる |
| 繰り上がり・繰り下がり | 足し算・引き算・掛け算 | 1つ上の位だけ1ずれている |
| 書き写し | どの計算でも | 問題の数字と式の数字が違う |
| 手順忘れ | 割り算・小数 | 途中で終わっている・商に0がない |
この5つのどれか1つでも見つかれば、筆算の苦手克服の入口に立てています。

「苦手」と「まだ慣れていない」は違う
筆算は、2年生の足し算・引き算から始まって、学年が上がるごとに手順が増えていく計算です。
新しい手順が加わったばかりの時期は、まちがいが増えて当たり前なんです。まずは「まだ慣れていないだけかも」と考えてみてください。
答案から原因を見つける筆算のつまずき診断表
ここからは、実際の答案の形から原因を見つける方法を紹介します。
子どもに解き直しをさせる前に、バツの付いた問題を親が1問ずつ見て、どの原因に当てはまるかを書きこんでみてください。
| 原因 | まちがえた答案の例 | 正しい答え | 見つけ方 |
|---|---|---|---|
| 九九 | 34×7=234 | 238 | 一の位だけ違う。4×7 を 24 と覚えていた |
| 位ずれ | 23×45=207 | 1035 | 答えが小さすぎる。2段目を1つ左にずらしていない |
| 繰り上がり | 47+38=75 | 85 | 十の位だけ1小さい。繰り上がりの1をたし忘れた |
| 繰り下がり | 52−27=35 | 25 | 一の位で 7−2 を計算した。上下を入れかえている |
| 書き写し | 63÷3=12 | 21 | ノートの式が 36÷3 になっていた |
| 手順忘れ | 85÷8=1 あまり 5 | 10 あまり 5 | 商に0をたて忘れた。確かめ算で 8×1+5=13 になる |
表のように、答案は「どの位が、どれだけずれているか」で原因の見当がつきます。
例えば、九九の覚えちがいなら同じ段で何度もまちがえますし、繰り上がりのたし忘れなら答えが1つ上の位だけ1小さくなります。
位ずれは2段目の書き出しを見る
23×45 のような2けたの掛け算では、2段目の書き出しを見ればすぐ分かります。
| 千の位 | 百の位 | 十の位 | 一の位 | |
|---|---|---|---|---|
| 2 | 3 | |||
| × | 4 | 5 | ||
| 23×5 | 1 | 1 | 5 | |
| 23×4 | 9 | 2 | ||
| 答え | 1 | 0 | 3 | 5 |
23×4 の 92 は、十の位から書きはじめます。本当は 920 という意味だからです。
ここを一の位から書いてしまうと、115+92=207 という小さすぎる答えになります。
診断が終わったら、多い原因を1つだけ選ぶ
5つ全部に当てはまる、ということはまずありません。
いちばん多かった原因を1つだけ選んで、次の1週間はそこだけ練習してみてください。
- バツの付いた問題を、子どもが消す前に写真に撮っておく
- 1問ずつ、表の5つの原因のどれかを書きこむ
- いちばん多い原因に丸をつける
- 1週間後に、同じやり方でもう一度数えてみる
原因別にやってみたい練習
原因が決まったら、練習もその原因に合わせて変えます。
| 原因 | 家でできる練習 | 1回の目安 |
|---|---|---|
| 九九 | まちがえた段だけを、下から・ばらばらの順で言う | 1つの段を2回 |
| 位ずれ | マス目のノートで、2段目の書き出しに印をつけてから書く | 2けた×2けたを3問 |
| 繰り上がり・繰り下がり | 繰り上がりが1回だけある問題から始めて、2回ある問題へ進む | 5問 |
| 書き写し | 問題を写したら、指で1文字ずつなぞって見比べる | 毎回の宿題で |
| 手順忘れ | 手順の名前を声に出しながら解く | 割り算を3問 |
『九九はもう覚えているはず』と思っていても、7の段や8の段の後半だけあやしいことはよくあります。
ばらばらの順で聞いてみると、どの段のどこが弱いかがはっきりしますよ。
割り算の筆算が難しい・できない時のつまずき
筆算の中でも、割り算の筆算は「難しい」と感じる子がいちばん多い計算です。
たてる・かける・ひく・おろすの4つの手順に、九九と引き算が全部入っているので、止まる場所も多いんですよね。
割り算の筆算のつまづきは「たてる」と「おろす」に多い
156÷6 で見てみます。最初の 1 には 6 が入らないので、15 から始めます。
| 手順 | すること | 式 | ノートに書く数 |
|---|---|---|---|
| たてる | 1には6が入らないので、15の中に6がいくつ入るか考える | 15÷6=2 あまり 3 | 5 の真上に 2 |
| かける | 割る数とたてた数をかける | 6×2=12 | 15 の下に 12 |
| ひく | 15から12をひく | 15−12=3 | 3 |
| おろす | 一の位の6をおろす | 3 と 6 で 36 | 36 |
| たてる | 36の中に6がいくつ入るか考える | 36÷6=6 | 6 の真上に 6 |
| かける | 割る数とたてた数をかける | 6×6=36 | 36 の下に 36 |
| ひく | 36から36をひく | 36−36=0 | 0 |
答えは 26 です。26×6=156 で確かめられます。
最初の「1には6が入らない」に気づけず、1 の上に商を書こうとして止まる子はとても多いです。「この数の中に6は入る?」と、先に入るかどうかだけを聞いてみてください。
商に0がたつ問題
もう1つの山場が、商に0がたつ問題です。612÷6 を見てみましょう。
| 手順 | すること | 式 | ノートに書く数 |
|---|---|---|---|
| たてる | 6の中に6がいくつ入るか | 6÷6=1 | 百の位に 1 |
| かける・ひく | 6×1=6、6−6=0 | 6−6=0 | 0 |
| おろす | 十の位の1をおろす | 1 | 1 |
| たてる | 1の中に6は入らないので0 | 1÷6=0 あまり 1 | 十の位に 0 |
| おろす | 一の位の2をおろす | 1 と 2 で 12 | 12 |
| たてる | 12の中に6がいくつ入るか | 12÷6=2 | 一の位に 2 |
| かける・ひく | 6×2=12、12−12=0 | 12−12=0 | 0 |
答えは 102 です。102×6=612 で確かめられます。
『0は書かなくてもいいと思った』という子は少なくありません。「おろしたら、商も1つ書く」と、おろすとたてるをセットで覚えると、0の書き忘れが減ります。
- 入らない位の上に商を書こうとして止まる
- 商に0をたて忘れて、答えの桁が1つ少なくなる
- ひいた答えが割る数より大きいのに、そのまま次へ進む
仕組みの理解は、大人が思うより難しい
割り算の筆算は、手順どおりに計算できても、それぞれの数が何を表しているかまで分かるのは意外と難しいんです。
令和5年度の全国学力・学習状況調査(小学校算数3(4))に、66÷3 の筆算を図で説明した問題が出ました。商の十の位に当たる式を選ぶ問題です。全国(公立)の正答率は47.8%で、報告書では各段階の商の意味を考えることに課題があるとまとめられています。
この結果は「筆算の計算ができない」という意味ではありません。手順の意味を説明することが難しい、という調査結果です。詳しくは国立教育政策研究所の報告書で読めます。
家でも、「この2は、本当はいくつのこと?」と聞いてみると、子どもが手順の意味を考えるきっかけになります。66÷3 なら、商の十の位の2は「20」のことです。
割り算の筆算のコツは「確かめ算」まで1セット
割り算の筆算のコツをひとつ挙げるなら、確かめ算を手順の最後に入れてしまうことです。
商×割る数+あまりが、割られる数に戻れば正解です。戻らなければ、どこかでまちがえています。
4つの手順そのものを確かめたい時は、割り算の筆算のやり方|たてる・かける・ひく・おろすの順番で1周ずつ追えます。

筆算で間違えない方法と早くする方法
計算ミスを減らすことと、早く解けるようになることは、実はつながっています。
止まらずに書ける子ほど、まちがいも少なく、時間も短くなるからです。
間違えない方法は「書き方」をそろえること
筆算の計算ミスは、計算の力よりも書き方から生まれることがよくあります。
- 1マスに1つの数字を書く
- 位を縦にそろえて書く
- 繰り上がり・繰り下がりの数は、いつも同じ場所に小さく書く
- 問題を写したら、式と問題を指でなぞって見比べる
- 答えを書いたら、確かめ算か見積りで見直す
マス目のあるノートを使うと、位ずれがぐっと減ります。ノートの選び方は筆算ノートの選び方と書き方|マス目・枠で計算ミスを減らすで紹介しています。
書き写しのミスは「指でなぞる」で減らす
教科書やプリントからノートに式を写す時、63 を 36 と書いてしまうような入れかわりは、どの学年でも起こります。
計算の力とは関係ないミスなので、写したあとに指で1文字ずつなぞって見比べるだけで減っていきます。
「写したら、指でなぞってから計算しようね」と、計算の前に1つだけ手順を足してみてください。
見積りで答えの大きさをつかむ
学習指導要領の解説には、19×6 の答えは 20×6 が 120 だから、120 より小さくなる、という見積りの例が出てきます。
こうして先にだいたいの大きさを考えておくと、桁数がずれた答えにすぐ気づけます。19×6=114 なので、たしかに120より少し小さいですね。
| 問題 | 見積りの式 | だいたいの大きさ | 正しい答え |
|---|---|---|---|
| 19×6 | 20×6 | 120より少し小さい | 114 |
| 23×45 | 20×50 | 1000くらい | 1035 |
| 612÷6 | 600÷6 | 100くらい | 102 |
筆算を早くする方法は「止まらない」こと
筆算を早くする方法を探している方も多いはずです。
ただ、手を速く動かそうとすると、かえってミスが増えがちです。早く解ける子は、手が速いのではなく、途中で止まらないんです。
- 九九をどの段からでもすぐ言えるようにする
- 2けた×1けたくらいは暗算でも出せるようにする
- 同じ種類の問題を、少ない数でくり返す
- 時間を計って、最初から速さを競う
- 種類の違う問題を一度にたくさん解く
- まちがいを見直さずに次へ進む
学習指導要領の解説でも、2けたに1けたをかけるくらいの簡単な計算は暗算でできるようにし、筆算や見積りに生かすことが大切だとされています。
筆算を早くするには、まず土台の九九と簡単な暗算を、止まらずに出せるようにしてみてください。
筆算の苦手克服は4週間で1か所ずつ
筆算の苦手克服は、一度にすべてを直そうとしないことがコツです。
1か所を直すのに、だいたい4週間くらいを見ておくと、親子とも焦らずに進められます。
| 時期 | やること | 1回の量の目安 | 親の役目 |
|---|---|---|---|
| 1週目 | 答案を診断して、いちばん多い原因を1つ決める | いつもの宿題だけ | バツの原因を書きこむ |
| 2週目 | その原因だけを練習する(九九・繰り上がりなど) | 5問くらい | できた所を先にほめる |
| 3週目 | 原因の練習と、いつもの筆算を混ぜる | 5〜8問 | 確かめ算をしているか見る |
| 4週目 | もう一度診断して、減ったかを数える | いつもの宿題だけ | 次に練習する原因を一緒に決める |
4週目に同じ原因のまちがいが減っていたら、次の原因に進みます。減っていなかったら、2週目の練習をもう少し続けます。

練習する問題の選び方
練習問題は、原因に合わせて選ぶと効果が出やすいです。
九九が原因なら、筆算ではなく九九だけを練習します。繰り上がりが原因なら、繰り上がりが1回だけある足し算から始めます。原因別の問題の選び方は筆算プリント・問題の選び方|答えつき練習問題と進め方にまとめています。
教える時の声かけ
家で教えていると、『どうしてまたまちがえるの』と言いたくなる日もありますよね。
そんな時は、「どこで止まった?」と聞いて、子どもに指さしてもらってみてください。止まった場所を自分で言えるようになると、次から自分で気をつけられるようになります。
声かけの言い換えは、割り算の筆算の教え方|引き算の繰り下がりも家で教えるコツで詳しく紹介しています。
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よくある相談:割り算の筆算ができない時
ここでは、ネットの相談サイトに寄せられている筆算のつまずきの悩みから、よく見られるものを要約して紹介します。
相談1 割り算の筆算は何年生で習う?宿題が難しくて困っている
塾の宿題に難しい割り算が出て困っている、割り算の筆算は何年生で習うのか、という相談です。
学習指導要領では、わり算の筆算は4年生で習います。割る数が1けたや2けた、割られる数が2けたや3けたの計算です。
3年生では、九九を1回使うわり算と、80÷4 のような簡単な2けた÷1けたの計算の仕方を知るところまでです。教科書によって前後することがあります。
学年より先の問題でつまずいている時は、できないのではなく、まだ習う前なだけのことがあります。学校で習う順番は筆算は何年生で習う?足し算から小数まで学年別の流れで確かめられます。
相談2 筆算より正確に早く計算する方法はある?
テストで使える、筆算より正確に早く計算する方法を知りたい、という相談です。
筆算を使わずに済む近道を探したくなりますよね。ただ、問題によっては筆算がいちばん確実なこともあります。
おすすめは、筆算の前に見積りをして、あとで確かめ算をすることです。見積りで答えの大きさが分かっていれば、桁のずれたミスにすぐ気づけます。
相談3 5年生だけど割り算の筆算がよく分からない
5年生になったけれど割り算の筆算が分からない、調べても分かる所と分からない所がある、という相談です。
5年生では小数で割る割り算も習うので、その前の整数の割り算でつまずいていると、ますます難しく感じますよね。まずは2けたで割る割り算に戻って、仮の商の立て方を確かめてみてください。
| 手順 | すること | 式 | ノートに書く数 |
|---|---|---|---|
| たてる | 24を20とみて、16÷2で見当をつける | 16÷2=8 | 仮の商 8 |
| かける | 割る数と仮の商をかける | 24×8=192 | 192 は168より大きい |
| 直す | 大きすぎたので商を1小さくする | 24×7=168 | 商を 7 にする |
| ひく | 168から168をひく | 168−168=0 | 0 |
168÷24 の答えは 7 です。かけた答えが上の数より大きくなった時は「商を1小さくする」と覚えておくと、止まらずに進めます。
さらに詳しい直し方は2桁で割る割り算の筆算|仮の商の立て方と直し方で紹介しています。
よくある質問
筆算が苦手な子は、何から練習すればいいですか?
まず、バツの付いた答案を見て、まちがいの原因を九九・位ずれ・繰り上がりと繰り下がり・書き写し・手順忘れの5つに分けてみてください。いちばん多い原因を1つだけ選んで、そこから練習すると効果が出やすいです。
割り算の筆算が苦手な子には、どう教えればいいですか?
「たてる・かける・ひく・おろす」の手順の名前を先に覚えてもらい、手が止まったら「次は何をする?」と聞いてみてください。九九で止まっている時は、割り算の前に九九を練習するほうが近道です。
筆算の計算ミスを減らすコツはありますか?
1マスに1つの数字を書いて位をそろえること、繰り上がりの数をいつも同じ場所に書くこと、最後に確かめ算をすることの3つです。問題を写したあとに式と見比べるだけでも、書き写しのミスは減ります。
筆算を早くするにはどうしたらいいですか?
手を速く動かすより、途中で止まらないようにすることが大切です。九九をどの段からでもすぐ言えるようにし、2けた×1けたくらいの簡単な計算は暗算でも出せるようにすると、自然に早くなっていきます。
どのくらいで苦手を克服できますか?
子どもによって違いますが、1つの原因を直すのに4週間くらいを目安にすると、焦らずに進められます。まちがいの数を1週目と4週目で比べると、変化が分かりやすいです。
まとめ
筆算が苦手な子は、筆算全体が苦手なのではなく、決まった1か所で止まっていることがほとんどです。
答案を診断表で見て原因を1つに絞り、そこだけを4週間くらい練習してみてください。筆算の基本をもう一度確かめたい時は筆算とは?意味・読み方とやり方の基本をやさしく解説も参考になります。
- 筆算のまちがいは、九九・位ずれ・繰り上がりと繰り下がり・書き写し・手順忘れの5つに分けられる
- 答案の「どの位がどれだけずれたか」で原因の見当がつく
- 割り算の筆算のつまずきは、たてるとおろすに多い
- 間違えない方法は書き方をそろえることと、見積り・確かめ算
- 早くする方法は、九九と簡単な暗算で途中で止まらないこと





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