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そろばんを習っている子が、学校の筆算で急に手が止まると『そろばんができるのに、どうして?』と驚きますよね。
結論から言うと、そろばんと筆算は「どの位から計算するか」と「途中の数が残るか」が違うので、混ざって迷うことがあるんです。
この記事では、そろばん・暗算・筆算を2つの目線で比べて、混乱した時の声のかけ方を紹介します。
そろばんと筆算の違いは?先に結論
筆算は紙に数字を書いて、足し算・引き算・掛け算は一の位から計算します。そろばんは珠を動かして、一般に大きい位から計算していきます。どちらが上ということではなく、計算の進め方が違う道具です。
筆算は、位をそろえて縦に書き、紙の上で計算する方法です。くわしくは筆算とは?で紹介しています。
そろばんは、文部科学省の学習指導要領の解説で「古くから我が国で用いられている計算のための道具」と説明されています。
学校の算数では、そろばんは3年生と4年生で習います。
| 学年 | 学習指導要領に書かれている、そろばんで習うこと |
|---|---|
| 3年生 | そろばんでの数の表し方。簡単な足し算・引き算 |
| 4年生 | 足し算・引き算。大きな数や小数の計算の仕方を考える |
3年生では整数は万の単位まで、小数は小数第一位まで、4年生では億や兆の単位、小数第二位までを表します。
出典は文部科学省 小学校学習指導要領(平成29年告示)とその解説です。
そろばん・暗算・筆算を「計算の向き」と「途中が残るか」で比べる
ここでは、そろばん・暗算・筆算の3つを、計算の向きと途中が残るかで比べてみます。
『そろばんの子は暗算が得意だから、筆算もすぐできるはず』と思う方も多いはずです。
実は、この2つの目線で見ると、得意なことの形が少しずつ違うと分かります。
| そろばん | 暗算 | 筆算 | |
|---|---|---|---|
| 計算する場所 | 珠の上 | 頭の中 | 紙の上 |
| 計算の向き(足し算) | 大きい位から入れていくのが一般的 | 大きい位から考える人が多い | 一の位から |
| 繰り上がりの扱い | すぐ上の位の珠を動かす | 頭の中で覚えておく | 小さい数字で書いておく |
| 途中の数 | 次の珠を動かすと消える | 頭の中にしかない | 紙に全部残る |
| 見直し | もう一度はじめから入れ直す | もう一度考え直す | 書いた数を1つずつ確かめる |

筆算は「途中が残る」のが強み
筆算のいちばんの特徴は、途中の数が紙に残ることです。
どこで間違えたかを、後から指でたどって探せるんです。
学習指導要領の解説では、筆算として計算の仕方をまとめた後は、手順どおりに間違いなく筆算を行うことが大切、と書かれています。
暗算は「紙を使わない計算」
暗算は、紙や鉛筆を使わずに頭の中でする計算です。
明治5年の小学教則にも「暗算トハ胸算用ニテ紙筆ヲ用ヒス」とあり、筆算と暗算を一日おきに練習させる、と書かれていました。昔から、筆算と暗算はセットで考えられてきたんですね。
今の学習指導要領でも、3年生では簡単な計算は暗算でできるよう配慮する、と書かれています。4年生では、暗算を筆算や見積りに生かすよう配慮する、とされています。
3年生の解説では、暗算で扱う「簡単な計算」は2桁に1桁をかける程度の掛け算とされています。大きな数まで暗算でできなくても心配はいりません。
筆算を左から・上の位から計算するとどうなる?
そろばんや暗算に慣れた子は、筆算でも左から、つまり大きい位から計算しようとすることがあります。
『上の位から計算したらダメなの?』と気になりますよね。
足し算・引き算・掛け算の筆算は、一の位から計算すると繰り上がりを書き直さずに済みます。割り算の筆算だけは、大きい位から計算していきます。
足し算の筆算を上の位から計算した例
276+158 を、上の位から計算してみます。
| 順番 | 計算 | 書いた数 | 起きること |
|---|---|---|---|
| 百の位 | 2+1=3 | 3 | ここではまだ答えが決まらない |
| 十の位 | 7+5=12 | 2 | 1 繰り上がるので、百の位の 3 を 4 に直す |
| 一の位 | 6+8=14 | 4 | 1 繰り上がるので、十の位の 2 を 3 に直す |
最後に直した数で読むと、答えは 434 です。
上の位から計算しても答えは出せます。ただ、繰り上がりのたびに、前に書いた数を消して直すことになるんです。
一の位から計算すると、こうなります。
| 百の位 | 十の位 | 一の位 | |
|---|---|---|---|
| 繰り上がり | 1 | 1 | |
| 2 | 7 | 6 | |
| + | 1 | 5 | 8 |
| 答え | 4 | 3 | 4 |
一の位 6+8=14、十の位 7+5+1=13、百の位 2+1+1=4 で、答えは 434 です。
一度書いた数を直す必要がありません。筆算が一の位から計算する理由は、ここにあります。
引き算の筆算も一の位から
引き算でも同じことが起きます。642−275 で見てみましょう。
| 百の位 | 十の位 | 一の位 | |
|---|---|---|---|
| 繰り下がり後 | 5 | 13 | 12 |
| 6 | 4 | 2 | |
| − | 2 | 7 | 5 |
| 答え | 3 | 6 | 7 |
一の位は 2 から 5 がひけないので、十の位から 10 を借りて 12−5=7 です。
十の位は 4 が 3 になり、3 から 7 はひけないので、百の位から借りて 13−7=6。百の位は 5−2=3 で、答えは 367 です。
もし上の位から 6−2=4、4−7 と進めると、十の位で「ひけない」と気づいた時に、もう書いた百の位を直すことになります。
引き算は、借りる時に上の位の数が変わります。だから下の位から計算したほうが、書き直しが少なくて済むんです。
掛け算の筆算と暗算の違い
掛け算の筆算と暗算でも、向きの違いが出ます。48×6 で比べてみましょう。
| やり方 | 進め方 | 答え |
|---|---|---|
| 筆算(一の位から) | 8×6=48 で 8 を書き 4 を繰り上げる。4×6=24 に 4 を足して 28 | 288 |
| 暗算(大きい位から) | 40×6=240、8×6=48、240+48=288 | 288 |
どちらも答えは同じです。暗算では大きい位から考えて最後に足すと、頭の中で覚えておく数が少なくて済みます。
割り算の筆算は、大きい位から
割り算の筆算は、ほかの3つと違って大きい位から計算します。
例えば 84÷4 なら、まず十の位の 8÷4=2 を立て、次に一の位の 4÷4=1 を立てて、答えは 21 です。
そろばんや暗算で大きい位から考える子にとっては、割り算の筆算の向きはなじみやすいかもしれません。
そろばんの子が筆算で混乱する・できない時の考え方
そろばんの子が筆算で混乱するのは、そろばんの力が足りないからではありません。
ここが大事なところです。2つのやり方の決まりが、頭の中で混ざっているだけなんです。
混乱した時は、どちらかをやめるより「今はどっちのやり方?」と場面を分けてあげると落ち着きやすくなります。筆算では、書く場所と順番を声に出して確かめるのが近道です。
- 足し算を左から書き始めていないか
- 繰り上がりの小さい数字を書かずに、頭で覚えていないか
- 途中の数を書かずに、答えだけ書いていないか
- 割り算の商を、ちがう位の上に書いていないか
例えば、繰り上がりを書かない子には、こんな声かけが使えます。
「頭の中で覚えている 1、ここに小さく書いておこうか。」
「書いておけば、後で見直せるね。」
『そろばんで速く計算できるのに、わざわざ書くの?』と子どもが言うこともあります。
その時は、筆算はテストで見直す時に役立つ、と伝えてみてください。
- 位をそろえて、マス目に1つずつ数字を書く
- 一の位から計算することを声に出して確かめる
- 繰り上がりは、小さい数字で書いておく
- 答えが出たら、そろばんや暗算で確かめてもいい

最後の確かめに、得意なそろばんや暗算を使うのはいい方法です。自分の得意を生かせるので、筆算への苦手意識もやわらぎやすくなります。
よくある混乱の形と声かけ
混乱の形ごとに、声のかけ方を分けておくと迷いにくくなります。
| よくある混乱の形 | 起きていそうなこと | 声かけの例 |
|---|---|---|
| 足し算を左から書き始める | そろばんの順番で進めている | 「筆算は、どの位から始めるんだっけ?」 |
| 繰り上がりを書かない | 頭の中で覚えておくくせ | 「その 1、小さく書いておこうか」 |
| 答えだけ書いて途中がない | 暗算で済ませている | 「途中も書いておくと、後で見直せるよ」 |
| 割り算の商の位置がずれる | 商の置き方の決まりが混ざっている | 「この数は、何の位の上に書く?」 |
どれも、答えを言うより「どこに書く?」「どこから始める?」と聞くほうが、子どもが自分で気づきやすいです。
足し算の筆算の書き方は、足し算の筆算のやり方でくわしく紹介しています。
家で筆算を練習する時は
そろばんの練習とは別に、学校の筆算をもう一度順番に確かめたい、という時もありますよね。
学年にとらわれずに、前の単元に戻って練習できる教材を使う方法もあります。
すらら(株式会社すららネット)は、無学年方式のオンライン教材です。どうしてそうなるのかをアニメーションで直感的に理解できるよう工夫している、と公式サイトで案内されています。
合うかどうかは、無料体験で一度試してみると分かります。
家庭学習教材
筆算でつまずく所を、アニメの授業で見直してみる
すららは、学年にとらわれずにさかのぼって学べる無学年式のオンライン教材です。キャラクターとの対話形式のレクチャーとAI搭載のドリルで、パソコンやタブレットから一人でも進められます。合うかどうかは無料体験で確かめられます。
無料体験すららの無料体験を見てみる(すららの公式サイトに移動します。最新の内容は公式サイトで確認してください)
計算ミスのくせが気になる時は、筆算が苦手な子のつまずきも参考にしてみてください。
そろばんと筆算でよくある相談
知恵袋でよく見かける、そろばんと筆算についての相談を要約して答えます。
質問は要約しています。そろばん教室の指導方針は教室ごとに違うので、迷った時は教室の先生にも相談してみてください。
相談1 そろばんを習っている1年生が、筆算を嫌がる
5歳からそろばんを習っている1年生の子が、筆算を嫌がる、という相談です。
1年生の算数では、まだ筆算は習いません。学習指導要領で筆算が出てくるのは2年生からです。
今の時点で無理に筆算をさせなくても大丈夫です。2年生で学校の筆算が始まった時に、書き方を一緒に確かめてあげれば十分です。
相談2 公文とそろばんは両方やると混乱する?
公文とそろばんは相容れない、と聞いて迷っている、という相談です。
両方を続けるかどうかは、子どもの負担や家庭の時間で決めてかまいません。どちらかが良くない、と決めつける必要はありません。
混乱が見えた時は、場面を分けて声をかけるのが基本です。くもんの教材の流れはくもん(公文式)の筆算で紹介しています。
相談3 そろばんを習っていた人も、筆算を使うことはある?
そろばんを習っていた人でも、筆算を使うことがあるか、という相談です。
答えははいです。テストで途中の式を残したい時や、桁の多い計算を見直したい時は、筆算が役に立ちます。
そろばんで身につけた数の感覚は、筆算の答えの見当をつける時にも生きてきます。そろばんの歴史は筆算の歴史でも紹介しています。
相談4 昔はそろばんで計算していたのに、なぜ学校は筆算なの?
江戸時代などはそろばんで計算していたはずなのに、筆算ではだめだったのか、という相談です。
国立国会図書館の「江戸時代の数学」によると、明治5年(1872年)に文部省が学制を出し、算数の教育は和算ではなく洋算で進める方針になりました。
その後、学校の現場から和算は姿を消しましたが、計算の道具としてのそろばんだけは残った、と紹介されています。
| 時代 | 計算のしかた |
|---|---|
| 江戸時代 | そろばんによる計算が広く使われた |
| 明治の学制のころ | 学校の算数は洋算の方針に。教則には筆算と暗算の練習が書かれた |
| 今 | 筆算を中心に、そろばんも3・4年生で習う |
どちらかが古くて、どちらかが新しい、という話ではありません。今の学校でも、そろばんと筆算の両方を習っています。
よくある質問
そろばんを習っていると筆算ができないことはありますか?
そろばんの力が足りないわけではなく、計算の向きや繰り上がりの書き方の決まりが混ざって、筆算で迷うことがあります。場面を分けて声をかけると落ち着きやすくなります。
筆算は左から計算してはいけないのですか?
足し算・引き算・掛け算の筆算は、一の位から計算すると繰り上がりを書き直さずに済みます。学校で習った順番に合わせるのが安心です。割り算の筆算は大きい位から計算します。
そろばんは学校の何年生で習いますか?
学習指導要領では、そろばんは3年生と4年生で習います。3年生でそろばんでの数の表し方と簡単な足し算・引き算、4年生で足し算・引き算と大きな数や小数の計算の仕方を考えます。
暗算と筆算はどう違いますか?
暗算は紙や鉛筆を使わず頭の中で計算する方法で、筆算は紙に書いて計算する方法です。筆算は途中の数が残るので、見直しがしやすいのが特徴です。
まとめ
- 筆算は紙に書いて、足し算・引き算・掛け算は一の位から計算する
- そろばんや暗算は、大きい位から考えることが多い
- 筆算は途中の数が紙に残るので、見直しがしやすい
- 割り算の筆算は、大きい位から計算する
- 混乱した時は「今はどっちのやり方?」と場面を分けて声をかける





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