筆算の歴史|関孝和と和算・海外の筆算と英語の言い方

机の上の和綴じの本・そろばん・方眼ノートと、筆算の歴史を紹介する記事タイトル

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『筆算って、いつ誰が考えたんだろう?』と、子どもに聞かれて答えに詰まったことはありませんか。

結論から言うと、筆算を一人で作った人がいる、という記録は確認できません。日本の筆算の歴史は、江戸時代の和算とそろばん、明治の学制による洋算への切り替え、今の算数、という3つの時代で見ると分かりやすいです。

この記事では、関孝和と和算の話から、海外の筆算と英語での言い方まで、順番に紹介します。

目次

筆算の歴史を3つの時代の年表で見る

先に結論

江戸時代はそろばんと和算、明治の学制からは学校の算数が洋算に、そして今は2年生から筆算を習う、という流れです。筆算は日本だけのものではなく、海外の算数にも紙に書いて計算する方法があります。

まずは全体の流れを、3つの時代に分けた年表で見てみましょう。

時代年できごと
江戸時代より前1590年代刊行された『日葡辞書』に「Soroban」の項目がある
江戸時代1627年そろばんによる四則演算の計算法などをまとめた『塵劫記』の初版
江戸時代1650年代ある人の日記に、自分たちの世代はそろばん、古老は算木で計算していたらしいと書かれる
江戸時代1708年和算家の関孝和が亡くなる。独自の記号法(傍書法)を残した
明治明治2年(1869年)『筆算訓蒙』が刊行される
明治明治5年(1872年)学制が出され、学校の算術は洋算を用いる方針に
明治明治6年(1873年)学制が全国的に施行される
今平成29年告示今の学習指導要領。2年生から筆算の仕方を習う

江戸時代の出来事は、国立国会図書館の江戸時代の数学をもとにしています。

江戸・明治・今の3つの時代で筆算の歴史をまとめた図解

『昔の人も、今みたいに縦に書いて計算していたの?』と気になりますよね。

ここからは、時代ごとに何が起きたのかを見ていきます。

江戸時代の計算は、そろばんと和算

江戸時代の日本では、毎日の計算にはそろばんが使われていました。

この章の結論

江戸時代の計算の中心はそろばんでした。一方で、和算家たちは紙に式を書く方法を工夫していて、そこに今の筆算や代数につながる考え方が見られます。

国立国会図書館の「江戸時代の数学」では、江戸時代の数学の歴史はそろばんの日本伝来から始まる、と紹介されています。

1627年に初版が出た『塵劫記』は、そろばんによる四則演算の計算法などをまとめた本です。足し算・引き算・掛け算・割り算を、そろばんで学べるようにした本だったんですね。

そろばんと筆算の違いは、そろばんと筆算の違いでくわしく紹介しています。

関孝和と筆算の関係

筆算の歴史を調べると、和算家の関孝和の名前がよく出てきます。

国立国会図書館の資料では、関孝和は独自の記号法である「傍書法」を開発し、天元術を大きく発展させた、と紹介されています。

用語どんなものか(国立国会図書館の資料より)
天元術未知数を1つだけ使って式を立てる方法
傍書法数字と文字を1つの式の中に書けるように工夫した記号法
傍書法でできたこと未知数がいくつもある式を、1つの式に書けるようになった

傍書法は、関孝和の後に一般的になった数式の書き方だそうです。

関孝和が生きている間に刊行された本は『発微算法』で、『括要算法』は亡くなった後に弟子が刊行した、と紹介されています。

出典は国立国会図書館の江戸時代の数学 第2章 関孝和です。

点竄は「筆算」と評価されてきた

和算には「点竄(てんざん)」と呼ばれる、紙に式を書いて計算する方法がありました。

科学史の論文「和算における「点竄」の由来と成立について」によると、点竄は「筆算,ないし西洋の代数学だと評価されてきた」とされています。

明治期の和算史の本には「点竄術は,一の筆算法なり」という記述があり、関孝和の「天元演段法」を広めたもの、と書かれていたそうです。

ここは間違えやすいところ

「関孝和が筆算を作った」「関孝和が自分で筆算と名付けた」とは言えません。点竄を筆算と結びつけたのは、後の時代の和算史家による評価や解釈です。論文でも、その評価そのものを改めて検討しています。

『じゃあ、関孝和と筆算は関係ないの?』と思う方もいるかもしれません。

関係がないわけではなく、紙に式を書いて計算する工夫を広げた人として、筆算の歴史の中で名前が挙がる、と考えると正確です。

筆算を作った人・考えた人はいる?

筆算を作った人、筆算を考えた人は誰か、という疑問もよく聞きます。

結論から言うと、筆算を一人で考えた人の名前を示す記録は、この記事で調べた公的な資料の中には見つかりませんでした。

筆算は、位をそろえて書けば計算しやすくなる、という工夫が長い時間をかけて形になったものです。だから「誰が考えた」より「どう広まったか」で見るほうが、歴史をつかみやすいんです。

明治の学制で、学校の算数は洋算へ

明治に入ると、学校で習う算数の中身が大きく変わります。

この章の結論

明治5年の学制で、学校の算術は洋算を用いる方針になりました。教科書には『筆算訓蒙』などが指定され、教則には筆算と暗算の練習が書かれていました。そろばんは計算の道具として残りました。

文部科学省の『学制百年史』によると、学制は明治5年(1872年)8月に公布され、明治6年から全国的に施行されました。

国立国会図書館の「江戸時代の数学」では、学制によって算数教育は和算ではなく洋算で進める方針になり、学校の現場から和算は姿を消した、と紹介されています。

ただ、計算の道具としてのそろばんだけは残った、とも書かれています。

項目明治の学制のころに決まったこと
学制の算術「九々数位加減乗除 但洋法ヲ用フ」(洋算を用いる)
教科書小学教則で『筆算訓蒙』『洋算早学』などを指定
練習のしかた「筆算ト暗算トヲ隔日練習セシム」(一日おきに練習)
そろばん文部省が教則の一部を修正(珠算の取り扱いなど)

学制の記述は文部科学省の学制百年史と、日本数学教育史研究の論文をもとにしています。

筆算の昔の言い方は?

『昔は筆算を別の言い方で呼んでいたの?』と聞かれることもあります。

ひとつの決まった呼び名があったとは言えませんが、資料に出てくる言葉を見ると、当時の言い方の手がかりがあります。

言葉出てくる資料どんな意味で使われているか
筆算『筆算訓蒙』(明治2年刊行)本の題名。紙に書いて計算する算術
洋法算術明治5年の小学教則西洋式の算術
暗算明治5年の小学教則「胸算用ニテ紙筆ヲ用ヒス」と説明
点竄和算紙に式を書く和算の方法。後に筆算と評価された

小学教則では、暗算を「胸算用」で紙や筆を使わない計算、と説明していました。つまり当時から、紙と筆を使う筆算と、頭でする暗算は、対になる言葉として使われていたんです。

教則どおりに教えるのは大変だった

日本数学教育史研究の論文「明治5年の教則の算術の教育課程について」によると、小学校で教則どおりに洋法算術を教えるのは無理があったそうです。

そのため文部省も、珠算の取り扱いなど教則の一部を修正した、と書かれています。

補足

珠算が正式に認められた具体的な日付や法令名は、この記事の調査では公的なページで確認できていません。ここでは、教則の一部が修正されたところまでを紹介しています。

今の算数の筆算は、2年生から

今の学校で習う筆算は、文部科学省の学習指導要領(平成29年告示)に沿っています。

この章の結論

今の算数では、2年生の足し算・引き算から筆算の仕方を習います。学習指導要領の解説では、筆算は十進位取り記数法、つまり10ずつのまとまりで位が上がるしくみに基づく計算だと説明されています。

学習指導要領の解説では、28+57 を例に、位をそろえて書けば十の位と一の位の計算に分けられる、と説明されています。

十の位一の位
繰り上がり1
28
+57
答え85

一の位の 8+7=15 の 1 を十の位へ繰り上げ、2+5+1=8。答えは 85 です。

解説はこれを、形式的に処理しやすくしたものが筆算形式である、とまとめています。江戸時代の和算家が紙に式を書いて工夫したのと同じように、今の筆算も「書けば計算しやすくなる」工夫なんですね。

学年ごとの流れは筆算は何年生で習う?で紹介しています。

割り算の筆算の考え方

割り算の筆算は、学習指導要領では4年生で習います。

解説では、72÷3 を例に、70 を10のまとまり7個とみて考える方法が紹介されています。

手順考え方式
110のまとまり7個を3つに分ける7÷3=2 あまり 1
2あまった10のまとまり1個と、2をあわせる10+2=12
312を3つに分ける12÷3=4
42個の10のまとまりと4で、商は2420+4=24

解説には、この見方が筆算の仕方に結び付く、と書かれています。

筆算の「たてる・かける・ひく・おろす」は、この考え方を紙の上で順番に書いたものなんです。

筆算は中学以降にもつながる

筆算は小学校で終わりではありません。

中学以降の素因数分解やルートの計算でも、筆算の形を使う場面があります。和算の点竄が代数とも評価されてきたように、筆算と式の計算はつながっているんです。

中学以降で使う筆算は、素因数分解・ルート・互除法の筆算で紹介しています。

家で筆算を練習するなら

歴史を知ると、筆算が「書いて考えるための工夫」だと分かりますよね。

家で練習する時も、手順を覚えるだけでなく、なぜそうなるのかを一緒に確かめると、つながりが見えやすくなります。

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筆算は日本だけ?海外の筆算と英語の言い方

筆算は日本だけのもの、と思っている方もいるかもしれません。

この章の結論

筆算は日本だけのものではありません。イギリス(イングランド)の算数のカリキュラムにも、紙に書いて計算する方法が学年ごとに書かれています。英語では「written method」という言い方が使われています。

イギリスの算数に出てくる筆算

イギリス政府のサイトで公開されている、イングランドの算数(mathematics)のカリキュラムには、紙に書いて計算する方法が出てきます。

学年(Year)カリキュラムに書かれていること日本語にすると
Year 3formal written methods of columnar addition and subtraction位を縦にそろえて書く、足し算・引き算の筆算
Year 4formal written layout(2桁・3桁×1桁)掛け算を書いて計算する形
Year 5long multiplication/short division2桁をかける掛け算の筆算/1桁で割る割り算の筆算
Year 6long multiplication/long division2桁をかける掛け算の筆算/2桁で割る割り算の筆算

出典は GOV.UK の「National curriculum in England: mathematics programmes of study」(確認日 2026年10月11日)です。

イギリスの Year 3 は、日本の学年とそのまま同じではありません。それでも、足し算・引き算から書く計算を習い、後で割り算の筆算に進む流れは、日本と似ていますね。

筆算を英語で言うと

筆算の英語は、一語で決まった訳があるわけではありません。上のカリキュラムの表現をもとにすると、次のように言えます。

日本語英語の言い方(カリキュラムの表現から)
筆算(全体)written method
足し算・引き算の筆算columnar addition and subtraction
掛け算の筆算(2桁をかける)long multiplication
割り算の筆算(1桁で割る)short division
割り算の筆算(2桁で割る)long division

『column method とも言うって聞いたけど?』という方もいるかもしれません。

その言い方そのものは、この記事で確認した公式資料には出てきませんでした。確かな表現を使いたい時は、上の表の言い方を選ぶと安心です。

long multiplication の例

英語で long multiplication と呼ばれるのは、日本でいう2桁をかける掛け算の筆算です。34×12 で見てみましょう。

百の位十の位一の位
34
×12
34×268
34×1034
答え408

34×2 は 68、34×10 は 340 です。68+340 で、答えは 408 です。

計算の中身は、日本の筆算と同じです。

筆算の英語での言い方を計算の種類ごとにまとめた図解

筆算の歴史と英語でよくある相談

知恵袋でよく見かける、筆算の歴史や英語についての相談を要約して答えます。

この章について

質問は要約しています。答えは、公的機関の資料と、この記事で紹介した論文で確認できたことだけで書いています。

相談1 筆算は英語で何と言う?calculation with figures でいい?

筆算は英語で何と言うのか、calculation with figures で通じるのか、という相談です。

calculation with figures でも「数字を使った計算」という意味は伝わりそうですが、紙に書いて計算するという筆算らしさは出にくいかもしれません。

イングランドの算数のカリキュラムでは、written method という表現が使われています。割り算の筆算なら long division や short division のように、計算ごとの言い方もあります。

相談2 英語圏では、割り算のあまりをどう書く?

日本では 10÷3=3 あまり 1 のように書くけれど、英語圏ではどう書くのか、という相談です。

あまりは英語で remainder と言います。ただ、英語圏で決まった書き方があるかどうかは、この記事で確認した公式資料では分かりませんでした。

国や学校によって書き方が違うこともあるので、英語の教材を使う時は、その教材の書き方に合わせるのが安心です。

ちなみに 10÷3 は、3×3=9 で 10−9=1 なので、商が 3、あまりが 1 です。

相談3 筆算は機械的に教えるより、意味を教えたほうがいい?

小学生は筆算でつまずくことが多いと聞くけれど、手順を機械的に教えるより意味を教えたほうがいいのでは、という相談です。

学習指導要領の解説には、筆算の計算の仕方を形式的に伝えるのではなく、数の仕組みや計算の意味に基づいて考えることが大切、と書かれています。

一方で、筆算として計算の仕方をまとめた後は、手順どおりに間違いなく筆算を行うことが大切だ、とも書かれています。

意味を考える場面
  • 新しい筆算を習い始めた時
  • なぜ繰り上がるのかで迷った時
  • 72÷3 を10のまとまりで考える時
手順をくり返す場面
  • やり方が分かった後の練習
  • 計算ミスを減らしたい時
  • テスト前の見直し

どちらか一方ではなく、意味を分かってから手順を練習する、という順番で考えてみてください。

よくある質問

筆算を作った人は誰ですか?

筆算を一人で考えた人の名前を示す記録は、この記事で調べた公的な資料では見つかりませんでした。位をそろえて書くと計算しやすくなる工夫が、長い時間をかけて広まったものと考えると分かりやすいです。

関孝和が筆算を考えたのですか?

関孝和は、数字と文字を1つの式に書ける傍書法を開発した和算家です。和算の点竄が筆算と評価されてきたのは後の時代の和算史家による解釈で、関孝和が筆算を作った、名付けたとは言えません。

筆算は日本だけのものですか?

日本だけではありません。イギリス(イングランド)の算数のカリキュラムにも、足し算・引き算や掛け算・割り算を紙に書いて計算する方法が学年ごとに書かれています。

筆算に昔の言い方はありますか?

ひとつの決まった呼び名があったとは言えませんが、明治2年に刊行された『筆算訓蒙』のように、明治のはじめには「筆算」という言葉が本の題名に使われていました。明治5年の小学教則には「洋法算術」という言葉や、紙と筆を使わない暗算の説明も出てきます。

割り算の筆算は英語で何と言いますか?

イングランドの算数のカリキュラムでは、1桁で割る割り算の筆算を short division、2桁で割る割り算の筆算を long division と書いています。

まとめ

この記事の要点
  • 筆算の歴史は、江戸の和算とそろばん、明治の学制で洋算へ、今の算数の3つの時代で見ると分かりやすい
  • 関孝和は傍書法を開発した和算家で、点竄を筆算と結びつけたのは後の時代の評価
  • 明治5年の学制で学校の算術は洋算の方針になり、そろばんは計算の道具として残った
  • 筆算は日本だけでなく、イギリスの算数にも書いて計算する方法がある
  • 英語では written method、割り算の筆算は short division や long division と書かれている
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筆算ドットコム 編集部

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